中学国語はいきなりつまずく
中学1年生が、国語の文法で一番最初に習うのが「言葉のまとまり」です。
言葉のまとまりとは、「文章」「段落」「文」「文節」「単語」のことで、特に「文節」と「単語」が毎年のように中学一年生を苦しめます。
このうち、文節について中学1年生用のテキストにはこう書いてあります。
発音や意味の上で不自然にならないように、文をできるだけ短く区切ったまとまり。文節の切れ目には「ね」などを入れることができる。
ところが、中学3年生用のテキストではこうなっています。
発音や意味の上で不自然にならないように、文をできるだけ短く区切ったまとまり。文節の初めには必ず自立語がくる。また、一文節には一つの自立語が含まれる。つまり、文を構成する文節の数=自立語の数である。
文節の切れ目は、「ね」などを入れて確認することもできる。
中学1年生に教えるには、間に「ね」を入れてみるという何とも曖昧な教え方しかできません。
というのも中学3年生用のテキストで説明されている自立語や付属語はこの時習っていないから教えられないのです。
この木から葉が私たちのもとに舞い落ちてくる。 |
この文を、「ね」を入れて文節分けしてみましょう。
➀この木からね葉がね私たちのもとにね舞い落ちてくるね。 ②この木からね葉がね私たちのねもとにね舞い落ちてくるね。 ③この木からね葉がね私たちのねもとにね舞い落ちてねくるね。 ④このね木からね葉がね私たちのねもとにね舞い落ちてねくるね。 ⑤このね木からね葉がね私たちのねもとにね舞いね落ちてねくるね。 |
どれが正しいかわかりますか?なんとなくどれでも当てはまるような気がしませんか?
正解は④番です。
「ね」を入れて違和感がないのが正解、といわれて中学1年生が戸惑う理由が伝わったかと思います。
次に単語についてです。
そう決めたら、たちまち気分が浮き立ってきた。 |
この文を単語分けしてみましょう。
➀そう/決めた/ら、/たちまち/気分/が/浮き立って/きた。/ ②そう/決め/たら、/たちまち/気分/が/浮き立って/きた。/ ③そう/決め/た/ら、/たちまち/気分/が/浮き立っ/て/きた。/ ④そう/決め/たら、/たちまち/気分/が/浮き立っ/て/きた。/ ⑤そう/決め/たら、/たちまち/気分/が/浮き立っ/て/き/た。/ |
中学1年生に選ばせたら、一番多いのは②ではないでしょうか。➀の人もいるでしょう。
そして一番選ばないのは⑤だと思います。
意味が通じるのが単語だと教えられている彼らは、「浮き立っ」のように中途半端に止めていたり、「て」「き」「た」とむやみに短く切ることを嫌います。
ところが正解は⑤なんです。
もう中学1年生からしたらわけが分かんないんですよね。
普通、どの教科でも体系だった指導順になっています。
例えば数学なら。
二次方程式を理解するためには、一次方程式はもちろん、因数分解と平方根の知識が必要です。
なので、教えようと思えば、一次方程式を習った後の中学1年生にも無理やり教え込めますが、きちんと中学3年生になって、因数分解も平方根も習ってから教えます。
ところがこの文節分けや、単語分けは、理解するために必要な知識を入れないまま、無理やり教え込まれるのです。
その後の品詞などを教えるうえで、言葉は全て単語に分けられるということを知ってもらいたいなどの意図があるのでしょうが、このせいで「国語の文法=難しい」というイメージがついてしまう生徒もいます。
これを防ぐためには、小学生のうちにある程度のことを理解しておかなければなりません。
小学生のうちに知っておきたい3つのこと
品詞分類を知る
まずは品詞分類です。単語は10個の品詞に分類されるということを知っておいてもらいたいのです。
まずは自立語と付属語で分かれます。その後、自立語の中で活用するものしないもの。付属語の中で活用するものしないもの。
そのご、文中での役割に応じて
- 「動詞」
- 「形容詞」
- 「形容動詞」
- 「名詞」
- 「副詞」
- 「連体詞」
- 「接続詞」
- 「感動詞」
- 「助動詞」
- 「助詞」
の、10個に分類されていきます。
なにも単語を見て、それがどの品詞かを分類できる必要はありません。
しかし、感覚的に「動詞」と「名詞」、欲を言えば「接続詞」くらいはわかるようになってもらいたいですし、「連体詞」か「副詞」のどちらかまではわからなくても修飾語であることに気づけたり、「形容詞」か「形容動詞」のどちらかだとわかるようにはなってもらいたいです。
そして、実際に小学生に教えていると、それくらいはできるようになります。
もちろんそれなりに時間はかかりますが、この感覚は英語などでも役に立つので時間をかける価値はあると思います。
活用を知る
次に活用を知ることです。活用とは、後に続く言葉に合わせて単語の語尾を変えることです。
これは自然にやっていて、例えば「走る」という動詞。走るという動作をしないよ、と言いたければ、「走るない」ではなく「走らない」と言いますよね。「走る」の語尾「る」を「ら」に変えています。
同じように、「ます」を後ろに付ければ「走ります」となり、命令するときには「走れ!」となります。
これを活用と言います。
そして、なにも五段活用や上一段活用……、また未然形や連用形……というようなことを覚えたり、問題を解けるようになる必要はありません。
しかし、先ほど例に挙げた「そう決めたら、たちまち気分が浮き立ってきた。」の「浮き立っ」が、「浮き立つ」という動詞を活用した形なのだと理解できるようになってもらいたいのです。
活用も知らず、これは「っ」までが単語なんだと言われても納得できません。
助動詞と助詞を知る
文節分けで大切なのは、自立語と付属語を見抜くこと。その付属語が助動詞と助詞です。
また、単語分けで活用と同じく困るのが、「走ってきた」の「きた」を、「き」と「た」に分けなければならないことです。これは「来る」という動詞に過去の助動詞「た」が組み合わさったものです。
動詞には今、その動作をする。と言う意味しかありません。
それに「過去」だったり「可能」だったり「受け身」などの意味を付け加えるのが助動詞です。それを理解しておかなければ、せっかく活用がわかっていても単語分けは上手くいきません。
この三つを知っていれば、中学国語の文法もなんとか理解できると思います。
順番がおかしいのだとは思いますが、そのことを嘆いても理解できるようにはなりません。
きちんと受け入れ、それに対処することが必要です。
塾長 増田
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